藤田 嗣治『腕(ブラ)一本・巴里の横顔―藤田嗣治エッセイ選』 [アート]
しばらく前から画家の書簡に興味があり蒐集しています。
文筆家の場合は、作品に思想・人格が明確に現れるため
作品を読むとおおよその人物像が浮かび上がります。
しかし、画家は作品だけからではなかなか人物像を読み取ることはできません。
人物像を浮かび上がらせるために、画家の場合、書簡はより大きな意味合いを持っていると思っています。
最近、幸いなことに藤田 嗣治の書簡を数通入手することができました。
いづれも小さな字でびっしりと書かれた内容の濃いものです。
藤田は画家には珍しく、筆達者で多くの文章を残しています。
あふれでる思考を抑えられないためでしょうか。
時に文章は饒舌で、自己陶酔的です。
私が入手した書簡にも、そんな雰囲気がにじみでています。
藤田は晩年フランスに帰化し、日本を捨てたかのような捉え方をされていますが、
藤田自身は「日本に捨てられた」と考えていたそうです。
アバンギャルドでスキャンダラスなイメージが先行した藤田の存在は
日本社会ではなかなか受け入れられなかったようです。
しかし、藤田は戦争中に軍部に協力し多数の戦争画を残すなど、
誰よりも日本人であることを意識し、愛国者として存在しようと努めた人物でした。
フランス画壇で華々しい成功を収めた天才芸術家の隠れた側面が、このエッセイ集からは伝わってきます。
画家自身の文章を読むことによって、これまでと全く違う人物像が浮かび上がってきました。







